研究概要
電磁波周波数スペクトル上で電波と光波の中間に位置するテラヘルツ周波数(100 GHz~10 THz)は、無線通信・イメージング・センシング・医療など幅広い応用が期待されています。特に、仮想空間と現実空間が高度に融合された持続可能で超スマートな未来社会「Society 5.0」実現の基盤技術である超高速・超大容量・超低遅延・超低消費電力な次世代無線通信システム(Beyond 5G; B5G)の無線搬送波として、電波の高周波極限であるテラヘルツ波を利用する研究開発が活発に行われています。
次世代無線通信システムB5Gの実現には、光からテラヘルツ波、さらにはマイクロ波からベースバンドに至る「超ブロードバンド」な電磁波を自在に駆使するデバイス・システム技術が必要です。本研究室では特に、新しい物理/原理/材料に立脚したサブテラヘルツ/テラヘルツ波帯半導体デバイスおよび光無線融合デバイスの創出を目指した研究をしています。
現在、以下の研究テーマに取り組んでいます。
研究テーマ #1:THzプラズモニック・ディテクタ
テラヘルツ周波数帯においては、電界効果トランジスタ(FET)チャネル内に二次元電子系の荷電振動量子:二次元プラズモンを励起することができ、新しいデバイス動作原理として注目されています。二次元プラズモンは電子よりも10倍以上の速度で伝搬するという性質を持つため、電子走行で律速される従来型電子デバイスを超える性能を持つ、プラズモニック・デバイスの実現が期待されます。
本研究室では、InGaAsチャネル高電子移動度トランジスタ(HEMT)をベースとし、サブµmの金属格子電極構造を持つTHzプラズモニック・ディテクタの研究を行っています。近年では、従来のチャネル面内二次元プラズモンの流体非線形性に、チャネル-電極間のダイオード電流非線形性を重畳させた、”プラズモニック三次元整流効果”によって飛躍的に性能が向上することを発見し、実用化に向けた研究を加速させています。

研究テーマ #2:光無線融合デバイス
次世代無線通信システムB5Gの実現においては、室温動作・集積化可能で高効率・低遅延かつ超低消費電力で光通信帯赤外光データ信号とテラヘルツ帯無線データ信号を相互変換する光無線融合キャリアコンバータ技術が必要不可欠です。
本研究室では、光通信のデータ信号を光周波数混合によってテラヘルツ無線通信帯データとして下方変換し、さらに局部発振信号との電波混合によってIF帯・ベースバンドへ下方変換する「光ダブルミキシング」という超ブロードバンドの複合信号処理機能を単一のトランジスタ構造素子で実現するデバイスの研究を行っています。

最近では、InGaAsチャネル高電子移動度トランジスタ(HEMT)に、単一走行キャリア・フォトダイオードを一体集積させた”UTC-PD集積HEMT”を新たに提案・具現化し、光ダブルミキシング変換効率を飛躍的に向上させることに成功しました。さらに、光電変換効率の向上のための導波モード共鳴構造導入UTC-PDの研究や、光無線融合デバイスのシリコンフォトニクス回路へのヘテロジニアス集積技術の開発など、実用化に向けた取り組みも行っています。
研究テーマ #3:二次元材料およびトポロジカル絶縁体のTHz/光無線融合デバイス応用
既存のテラヘルツ周波数帯デバイスや光無線融合デバイスを凌駕する高性能・高機能・高効率デバイスの実現のためには、新たな半導体材料の開拓が必要不可欠です。本研究室では、グラフェンを核とする二次元材料のヘテロ積層や、トポロジカル材料の特異な物性を活用した新規テラヘルツデバイスの研究を行っています。
最近では、トポロジカル半金属であるBi2Se3をアクティブ領域に持つレクテナダイオードを作製し、電子・ホール非対称Dirac分散に由来するバイアス無印加・高速テラヘルツ波検出の実証に成功しました。
また、黒リン/PtSe2/PtTe2といった狭バンドギャップ二次元材料に着目し、グラフェンとのヘテロ積層構造によって新しいデバイス動作原理を発現させ、テラヘルツ検出デバイスや光無線融合デバイスに応用する研究も進めています。
